
「歯周病」と聞くと、多くの方は
“歯ぐきが腫れる病気”
“年齢とともに仕方なく進行するもの”
というイメージを持たれているかもしれません。
しかし実際には、歯周病は“歯を支える骨”が静かに失われていく病気です。
しかも厄介なのは、かなり進行するまで強い痛みが出にくいことです。
歯みがきの時に少し血が出る。
口臭が気になる。
歯ぐきが下がってきた。
最近、歯が長く見える。
こうした変化は、実は歯周病の初期サインであることがあります。
近年では、「インプラント」や「歯列矯正」を希望される患者さんが増えています。
しかし、その土台となる歯ぐきや骨の状態が不安定なまま治療を進めると、せっかくの治療結果が長持ちしないこともあります。
新川デンタルクリニックでは、“生涯かかりつけ医になる”というコンセプトのもと、単に歯を治すだけでなく、長期的に安定した口腔環境を維持することを大切にしています。
たとえばインプラント治療。
インプラントは非常に優れた治療法ですが、天然歯以上に「歯周病管理」が重要になります。
天然歯には歯根膜というクッションがありますが、インプラントにはそれがありません。
そのため、炎症が起きると周囲の骨が急速に失われることがあります。
これを「インプラント周囲炎」と呼びます。
実際、インプラントがダメになる原因の多くは、噛む力そのものよりも、清掃不良や歯周病由来の炎症によるものだと考えられています。
つまり、インプラントは“入れたら終わり”ではなく、むしろそこからがスタートなのです。
また、歯列矯正とも歯周病は深く関係しています。
歯並びが整うことで清掃性が向上し、結果的に歯周病リスクが下がるケースもあります。
一方で、歯周病が進行した状態で矯正を行うと、歯を支える骨が弱くなっているため、歯が不安定になったり、歯ぐきが下がったりすることがあります。
特に成人矯正では、「見た目」だけではなく、“歯周組織の健康”を同時に考えることが重要です。
最近では、40代・50代以降に矯正を希望される方も増えています。
これは非常に良い流れですが、同時に「歯周病の検査と管理」が欠かせません。
実は、歯周病は特別な人だけがなる病気ではありません。
日本人の成人の多くに何らかの歯周病所見があると言われています。しかも、初期段階では自覚症状が少ないため、“気づかないまま進行している”ケースが珍しくありません。
だからこそ大切なのは、「痛くなったら行く歯科医院」ではなく、“問題が起きる前に管理する歯科医院”という考え方です。
定期的なクリーニングだけではなく、
・歯ぐきの状態
・出血の有無
・歯周ポケット
・噛み合わせ
・清掃しやすい環境づくり
などを総合的に確認していくことが、将来的な歯の寿命を大きく左右します。
歯周病は、静かに進行する病気です。
しかし逆に言えば、早期に気づき、継続的に管理することで、長く安定させることも可能です。
インプラントも。
歯列矯正も。
美しい口元も。
その土台には、健康な歯ぐきと骨があります。
見た目だけではなく、「長く快適に使える口腔環境」を一緒に考えていくことが、これからの歯科医療には求められているのかもしれません。
【参考文献】
・日本歯周病学会「歯周病と全身の健康」
・AAP(American Academy of Periodontology)
・European Federation of Periodontology(EFP)
・厚生労働省「歯周病検診マニュアル」
・Lang NP, Berglundh T. Periimplant diseases: where are we now? Consensus of the Seventh European Workshop on Periodontology. J Clin Periodontol. 2011.